年度末を迎えて、各クラスで最終の保護者会が行われました。
その席上、どのクラスも 「 この一年(あるいは、入園してから今まで)のわが子の成長と発達 」 について、出席したお母様方一人ひとりから話がありました。
 その中で全クラスの皆さんと分かち合いたい話題はたくさんありましたが、今回は、年少児・Yちゃんのお母さんが話してくださったエピソードを紹介いたします。

 ある晩、「 おやすみなさい 」 の前のひととき、Yちゃんがお母さんと “ いっぽんばし こちょこちょ ” の遊びをしました。
 そこから、Yちゃんの話が始まります。
「 お片付けの時間にお母さんを思い出して、泣きたくなって困っていたとき、年中・すみれ組のKちゃんが 『 わたしは“いっぽんばし こちょこちょ”が好きなんだ〜 』 って教えてくれたの。
 それからね、年長・ばら組のTくんはお庭の桑の実が採れたとき、洗ってわたしにくれたんだ〜。
 それとね、わたしが泣いて喉がカラカラに渇いたとき、先生がお茶を入れて、飲ませてくれたの 」
 これら、ひとつひとつは、先日のことであったり、6月頃のこと、入園して間もない頃のことと時期は様々ですが、Yちゃんの心の中に嬉しい出来事として印象深く残っているのでしょう。
 そして、Yちゃんは続けて 「 お母さんが泣いているとき、わたしが助けてあげるからね 」と言ったそうです。
 この言葉にお母さんは、「 緊張感の強い娘のYがお友だちや先生に助けられて過ごした一年だったことを感じ、助けられたこと、優しくされたこと、それを今度は人にわけてあげようとする姿を嬉しく思いました 」 と話してくださいました。

 人は成熟に向かって生きる存在です。大人の中には、子どもに悲しい思いをさせたくないという人もいるようですが、成熟するには失敗や挫折、悲しみや苦しみといったマイナスに感じる体験や感情を乗り越えることが必須の条件なのです。 けれども、それはいつも一人で乗り越えるばかりではありません。寂しくて泣きたくなったとき、辛くて泣いたとき、無関心ではいられず、励ましの言葉や温かい行いでその人を助け、支えてくれる人がいるのです。これこそ、愛の行為であり、その優しさに触れ、助けられた経験をもつ者が今度は自分が愛の行いをする人になるのです。Yちゃんのエピソードはまさしくこれです。

 一日の多くの時間を三学年の子どもたちが群れて遊んできた幼稚園という小さな社会の中で、私たち保育者の知るに及ばない、出会いや交流がそこかしこにあったことは想像に難くありません。
 武蔵野相愛幼稚園、ただいま在籍者数81名。
その一人ひとりにこの一年を織りなすドラマがあって、多くの人たちとの関わりの中でそれぞれが育ちあってきたことに心から感謝する年度末です。

〔 園長 佐川 曜子 〕 

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聖書の言葉

「 あふれるばかりに 感謝しなさい 」

〔 コロサイの信徒への手紙 2章7節 〕

武蔵野相愛幼稚園

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