夏休みの終わりに一通の挨拶状が届きました。
「 1962年以来、50年に亙りご愛顧を賜っておりました株式会社吉岡設計事務所の業務を本年8月末日をもって終了させていただくことといたしました。
私儀 84歳の今日まで皆様との親しいお交わりのおかげをもちまして、無事に楽しく仕事を続けることができました。
色々な面でのお支えを感謝し、この機会に厚く御礼申し上げます。 吉岡亮介 」
今から32年前の1979年10月28日、私たちが毎日生活している現幼稚園舎の落成式が行われました。この園舎を設計してくださったのが上の挨拶状の送り主、吉岡亮介設計士です。
さて、今年の秋も例年に違わず、夏休みが終わって9月の声を聞くと来春の入園を控えた幼児の保護者から園見学の問い合わせが増えてきました。
先日はこんな電話がありました。
「 そちらの幼稚園に入園はしなかったんですけれど、去年、相愛幼稚園の見学をした方から 『 外側から見る印象と全然違うから絶対園内を見せていただいたらいいわよ 』 と言われたので、一度見学させていただきたいのですが… 」
10月になると毎日のように幼稚園の見学者を迎えることになるのですが、園見学に訪れたほとんどの方が建物のセンスに感動してくださいます。
また、数年前の父親親睦会の折、幼稚園を訪れたお父さんがホールに座ってしみじみ言いました。
「 説明なんていりませんよ。
建物はそこで暮らす人の生き方が表れますからねー。だから、ここにこうして居ると幼稚園で子どもや先生たちがどんなふうに過ごしているか、よーくわかりますよ 」 と。
“ 暮らす人の生き方が表れる建物 ” とは、
“ 大切にしたい保育観が表れている園舎 ” と言い換えることができるでしょう。
相愛幼稚園の保育理念を受け入れ、具現化してくださった吉岡先生設計の園舎。
建物があって、そこに暮らす人たちがいる。その両方が相まって “ 相愛幼稚園 ” をつくっているのです。
園舎完成時、吉岡先生は 「 建築を決定するもっとも大きな要因は、それを建てようとする人の思想です。武蔵野相愛幼稚園の園舎は、創立以来受け継がれてきた幼児教育に対する確かな信念と思想によってこのような形をとるに至りました。この建物が今後、永きにわたって真に生き生きとした子どもたちを育てるお役に立ちつづけることが出来れば設計者として感謝のほかありません。 」 とおっしゃっています。
いつの時代もここに集う子どもや親、保育者が相愛の精神のもと、生き生きとした輝きを放ちながら生活していくことこそ、この建物を受け継いでいく私たちの使命であると信じます。
吉岡先生、永い間のお働き、お疲れさまでした。そして、ありがとうございました。
〔 園長 佐川 曜子 〕