「4月10日の入園式にチューリップの花が満開になりますように……」と願いながら育ててきた園庭のチューリップ。

 今年は3月末に白いチューリップが開花し始め、次に赤い花が続きました。植物には、早咲き、遅咲き、いろいろな種があります。また、同じ種のチューリップでさえ、一球、一球、育ちのスピードに多少の差があり、さらに、その年の冬の気候や土の状態などによっても、開花の時期に違いがあります。いずれにしても、ちょっと早く咲き始めた花に“春の訪れ”を感じ、ゆっくり咲く花に“待つことの楽しみ”を教えられるとき、咲き時の違うそれぞれの花にも、一本、一本役割が与えられていることを感じます。

 育てる仕事は相手の育つ可能性を信じることです。子どもたちの育ちに目を向けてみましても、成長のスピードが早い子もいれば、ゆっくりの子もいます。そのどちらが良いとか、悪いとかいうことではありません。どちらであっても、その子の特徴なのです。また、一人の成長過程を見ていても、ある面が突出して目立つ時もありますし、ぐんぐん伸びる時もあれば、停滞しているように見える時もあります。私たち保育者は、個々の子どもをよく知ると同時に、子ども(人間)の多様性を理解し、認めながら、大人に都合のよい鋳型にはめることなく、子どもの育ちを支えていきたいと考えています。

 春、園生活の中にはさまざまな出会いがあります。友だちとの出会い、先生との出会い、新しい部屋や遊具との出会い、そして、神様との出会い。その一つひとつが子どもたちの“今日”、そして、“これから”を支えるものとなります。信頼ある出会いこそ、幼児期に最も大切なことのひとつです。出会いのどのひとつ、どのひとときも嬉しく、幸せなものでありますようにと祈らずにはいられません。

 さまざまな心持ちの新学期。安心して園生活を送るために、「自分は受け入れられている」と感じ取れる雰囲気が必要です。保育者は一人ひとりの育ちに対して丁寧に、しかも、親身に関わりながら、子ども自身がくつろぎ、嬉しくいられる生活の場としての環境作りに努めます。
 一方、子どもの安定した生活を支えるには、大人も安心していることが必要です。
 わからないことや不安なことがありましたら、いつでも話しかけて下さい。喜びも楽しさも心配も共に分かち合いながら歩んで参りましょう。
 保護者の方々にとっても、子どもの園生活を通して、幼稚園が“居心地のよい場”となることを願っています。

 子どもも大人も一人ひとりが神様に愛されているかけがえのない存在です。  今年、武蔵野相愛幼稚園は創立70周年を迎えます。神様の恵みに感謝して、喜びと希望と期待をもって新年度の歩みを始めましょう。

〔 園長 佐川 曜子 〕

武蔵野相愛幼稚園

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