お正月のNHK番組で、中国における学校教育の様子が取り上げられていました。国の一人っ子政策による影響が子どもに対する過度の期待を生じさせ、超競争社会でリストラされた親が一人っ子にかける夢、しかしその重圧に耐え切れず爆発寸前の小学生たちの姿が哀れに映し出されていました。学校では成績によってすべてが判別され、その子がもっている個性までもがランク付けされてしまいます。家では親の監視のもと毎日宿題に追い立てられ、時には暴力をふるわれ、遊ぶ暇どころか休む暇さえない子どもたちが涙を流しながら訴えるのです。「お願い、私を理解して!」と。その姿が今でもはっきりと目に焼きついています。

 でもこの現実は隣国だけの問題でしょうか? この日本にも叫びたいのを必死にこらえている爆発寸前の子どもたちが大勢いるように思います。その子どもたちはみんな「親から愛されたい!」という願いをもっています。だからこらえているのです。自分の気持ちを押し殺しているのです。そこに安心(安らげる心)がないのは当然です。

 私が小学校4、5年生の頃だったでしょうか。授業参観日に母が教室に入ってきました。授業科目は大嫌いだった算数。しかもその授業の内容は一人ずつ生徒が前に出て、黒板に書かれている計算問題を解くというものでした。大勢の保護者の前で呼び出された緊張と苦手意識とでチョークを握った手は動かなくなり、結果は最悪でした。


 気がつくと母の姿はもうなく、私はかなり落ち込んで家に帰りました。自室に入り、勉強机を見ると、そこには今日できなかった算数の問題を書いた用紙が置いてあり、ちゃんと解き方と答えも書いてありました。私は顔から火の出る様な思いで台所の母のところへ行き、言い訳がましくこう言いました。「今日はごめんね。できなくて。ぼくはダメだね……」すると母はこう言ったのです。
「あら、どうしてダメなの? あなたはダメな子じゃないわよ。算数はできなかったわね。それは勉強すればいいじゃない。あなたはとてもいい子です。そして私と父さんの大事な子どもです。」

 母が天国へ行って今年で18年になりますが、この母の声は今もしっかりと耳に残っています。

 でも母に負けないくらいこの言葉を繰り返し告げてくださっているのがイエス様です。イエス様は今日もこう言われます。「忘れないでいなさい。 どんな時も、あなたがどこへ行っても、私はあなたといっしょです。 あなたは大事な たからものだから。」いつまでも変わらないこのイエス様の約束を、繰り返し子どもたちに伝えてゆきます。

〔 相愛教会牧師 真壁 巌 〕

武蔵野相愛幼稚園

住所

〒180-0003
東京都武蔵野市吉祥寺南町2-31-4