お母さんのお腹の中で十月十日、生まれてから一年、言葉が出たり、立ったり、歩いたりして二年、子どもたちが三歳を迎えるまでに経験することは、その子にとって、わたしたち大人の経験に比べる事の出来ない大きなものであることを、ひとりひとりの子どもを見るたびに思わされます。

 その子が、この世に命を与えられた時から、その子に与えられたものをもって、その子を囲む環境の中で、一日一日成長してきて、立派に個性を持っています。その子自身との出会いの中で、幼稚園での三年間、二年間を過ごしたいものです。

 お母さんと手をつないでお話をしながら幼稚園に来て、お友達との遊びの中に入っていきます。そして、お母さんのところへ帰っていきます。そうした毎日の中で、少しずつ自分を形成していきます。幼稚園の在園期間は、特にそうした、その子その子の成長が大切にされる時期であるようにと願っています。

 年度始め、年度終わりは、子どもたちを見ていますと、年少、年中、年長と、一年ごとでこうも違うものかと思わされる時期です。この子も一年前にはあんなだったのだと思うと、子どもの成長というものに感動いたします。考えてみれば、当たり前のことで、この時期の子どもにとって一年は大人の十倍の意味を持っているわけです。一つの経験、一日の時の流れを大切にしてあげなければと思います。

 年長の子を見ていて、よく気づかされることですが、卒園間近になって、その半年の間の成長の著しい子があります。それまでその子に幼さを感じていたのですが、急にその子らしい成長を見せてくれるのです。大人は、自分の枠にはめて子どもの成長を見がちですが、こうした時に、その子の成長というものがあることを改めて感じさせられます。そして、その子の成長を見ていてよかったと思うのです。

 幼児期は、知識や技術を身につけるよりは、人としての基本となるものをしっかりと自分のものにして成長する時期と考えます。そのほとんどは、幼稚園に入る前に決まっているという人もいますが、それを相愛幼稚園での友だちとの生活の中で、実際に、自分のものとして身につけて成長していく経験を重ねて欲しいと願っています。

〔 理事長 長山 恒夫 〕

武蔵野相愛幼稚園

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