買いそびれた時計
秋は、あちらこちらでイベントが目白押しです。相愛幼稚園は、10月12日(土)に初企画の「相愛 秋まつり」を行いました。
お父さん、お母さん、保育者がアイデアを出し合い、子どもたち(在園児とその兄姉弟妹)が楽しめる遊びや買い物のコーナーが設けられ、ラストは、日暮れの園庭で「花火見物」という、午後3時から6時まで、3時間のおまつりでした。
さて、この日の帰宅後、小学生のA君は妹の買った時計が羨ましくて、「僕も欲しかった…」と泣きました。
それは、「時計屋さん」で売っていたもので、彩り豊かな文字盤とベルトの中から自分の好みのものを選び、それをグルーガンで接着して仕上げるフェルト素材のオリジナルな時計でした。針も動かせます。
魅力的な時計店は、子どもたちの人気を集め混雑していました。その様子にA君は、後で買おうと思い、他のコーナーを楽しんでいたらあっという間におしまいの時間が来て、買いそびれたのでした。
泣く我が子を前に、A君のお母さんは、「休み明け、あなたは、学校。私は時計屋さんに『売ってもらえますか?』って聞いてあげるから」と約束しました。
連休明けの10月15日。A君のお母さん、時計屋さん(手芸係のお母さん)、保育者で話をしました。そして、おまつりの初めにみんなで聞いたいくつかの説明の中の「クッキーと時計は、ここにいる子どもたちの人数分あります。チケットを買ったらよーく考えて、今日のおまつりの中で楽しんでください。」という言葉を思い起こしました。
結局、A君のお母さんは、「時計は、おまつりの日に売っていたものだから、今日は買えなかった。」とA君に伝えました。
私たちは、普段、目に見えるものに頼って生活しています。けれども、目に見えるものは、時に私たちの心を惑わします。
今回は、時計こそ手元に届きませんでしたが、「欲しかったのね。」とA君の気持ちをお母さんが受けとめてくれたこと、休み明けに「今日でも時計は売ってもらえますか?」と掛け合ってくれたことがA君の心に届きました。
親の共感的な対応は、家族を信じ、隣人を信じ、そうした信頼に支えられた自分を信じて生きることにつながっていきます。
その上で、子どもの感情は受けとめながらも、大人として、伝えるべきことははっきりと示さなければならないことも往々にしてあります。社会的な規範や人としてのマナー、そして、前向きに生きる姿勢など。今回は、時計は買いそびれたけれど、ゲームをしたり、おやつを食べたり、相撲を取って楽しんだその時をよかったねと喜ぶ姿勢です。
深まりゆく秋、子どもたちと共に多くの恵みに感謝して歩む日々でありたいと願っています。
( 園長 木﨑 曜子 )
「 成長させてくださったのは神です。 」
〔 コリントの信徒への手紙Ⅰ3章6節 〕