共に生きる

 

 ロシアのウクライナ侵攻が始まってから平和を考えるきっかけにしてほしいと全国各地の書店で絵本の特設コーナーを設置するところが増えています。
 「声高に戦争反対を唱えるのではなく、国同士が争うことの意味、一人ひとりの命の重さを物語という形に包むことで大事なメッセージを伝え、今起きていることを、自分と地続きで考えるきっかけにしてほしい。」と、書店員がインタビューに答えていました。
 私も同じ思いです。
 幼児期の平和教育の基本は、子どもの心の中をたっぷりの愛情で満たし、遊びや生活、話や絵本を通して平和の精神で満たすことであると考えるからです。
 ウクライナ軍事侵攻後、関心が高まって、特に売れているのが、ウクライナ民話の絵本「てぶくろ」(エウゲーニー・M・ラチョフ/絵 うちだりさこ/訳)だそうです。相愛幼稚園でも読み継がれている絵本で、私の好きな一冊でもあります。
 内容を紹介しますと…

おじいさんが雪の森の中に、手袋を片方落としました。くいしんぼうねずみが手袋を見つけ、その中で暮らすことにしました。
そこへ、ぴょんぴょんがえるや、はやあしうさぎ、おしゃれぎつね、きばもちいのししたちが次々とやってきて仲間に入り、手袋は今にもはじけそうになります。
やがて落としたことに気づいたおじいさんが戻ってきて、連れていた犬が吠えたてると、驚いた手袋の中の住人たちは、森のあちこちへ逃げていきます。

 

 おじいさんが落とした片方の「てぶくろ」を奪い合うのではなく、次々にやってくる動物たちに「どうぞ」と分かち合う繰り返しの楽しさと温かさ。さらに、挿絵を眺めていると、だんだんと窓や梯子がついたり、煙突から煙が出ていたり。動物たちは単にてぶくろのろの中に入るのではなく、居心地のよい「住まい」へと改良を重ねているのです。
 てぶくろから覗かせる動物たちの顔は、こんなにぎゅうぎゅう詰めなのに、なんて楽しそうなんだろう! 外は寒いのに、なんて暖かそうなんだろう!
 私は、ここに絵本「てぶくろ」の魅力を感じるのです。


 新年度を迎えました。
 新学期は、喜びや期待と共に緊張や不安を伴うものです。
 しかし、どのような心持ちであっても与えられた出会いに感謝し、大切に、丁寧に、工夫して、たくましく歩んでいきたいと願っています。


 武蔵野相愛幼稚園の園名は、
  「愛する者たち互いに愛し合いましょう」
         (新約聖書 ヨハネの手紙T 4章7節)
の聖書の言葉から付けられました。
 互いに愛し合い、思いやり、共に生かされる喜びに心弾ませて、新年度のスタートを切りましょう。
 てぶくろの中で、動物たちが互いを受け入れながら、居心地のよい住まいをつくっていったように、幼稚園に集う子どもも大人もそれぞれの持ち味を発揮しながら、居心地のよい幼稚園づくりに主体的に係わる一人ひとりでありますように。

                            〔 園長 木ア 曜子 〕

 

てぶくろ加工.jpg

「わたしの助けは来る 天地を造られた主のもとから。」

                           〔 詩編121編1〜2節 〕