不自由≠不幸

 三寒四温。  春と冬を行ったり来たりの日々ですが、園庭のハクモクレンの花がほころび始め、この年度の歩みも終盤に近づいたことを告げています。

 2020年度の子どもたち。
 時差を設けた登降園の時間や間隔をとった昼食時の座席など、新型コロナウイルス感染予防の鍵となる、密を回避するための制約をものともせず、よく遊び、友だちと交わり、いざこざも経験し、子どもらしい毎日を過ごしてきました。

 2月4日のさんび礼拝の時のことです。
 この日は、柔らかな水彩のタッチで生命の尊さや何気ない日々の想いをしたためた詩画が、多くの人に希望や癒しを与えている星野富弘氏の話をしました。
 星野氏は、中学校教諭として、クラブ活動指導中の事故が原因で24歳の時に脊髄を損傷し、 四肢の自由を失ってしまいました。入院生活は九年に及びましたが、事故から二年後の1972年から口に筆をくわえて文字や絵を描き始めました。私は、口に筆をくわえて描く(書く)ことの至難さや病床でキリスト教の洗礼を受けたこと、また、毎週土曜日にお見舞いに来る女性と結婚したことなどを話しました。
 すると、寝たきりになった星野氏の結婚式の場面に子どもたちの関心が集まりました。
 「どうやって、結婚式したの?」
 「お祝いをする人たちがベッドのところに集まればいいよね!」
 「ごちそうとか美味しいものを持って!」
 と口々に言いました。
 子どもたちの発想のなんて前向きなことでしょう。
 それは、日頃、自分の思い通りにならないことも経験する集団生活の中で、不自由さや不足を嘆くことで終わらず、保育者や友だちに助けられたり、自ら工夫したりしてそれを乗り超えて遊ぶ子どもたちらしい発言でした。
 礼拝の準備をしている時には、まったく予想していない展開でしたが、私は子どもたちの反応を嬉しく受けとめました。この日の礼拝も神さまが礼拝の中心にいて導いてくださっている喜びを体験する恵み深いときとなりました。

 星野富弘氏は、「からだには傷をうけ、たしかに不自由ですが、心はいつまでも不自由ではないのです。不自由と不幸は、むすびつきやすい性質をもっていますが、まったく、べつのものだったのです。」とおっしゃいます。

 コロナと共存する生活様式は不自由さを感じることも多々ありますが、それを超えて、いつも私たちを愛し、育ててくださる神さまに信頼して歩んだこの一年も最終の月となりました。 変更や変化のあった今年度の保育に対し、理解し、協力してくださった保護者の皆さま、ありがとうございました。
                           〔 園長 木﨑 曜子 〕

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             〔出エジプト記3章12節〕

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