紆余曲折の過程を経て

 運動会の日、校庭の入場門と退場門をご覧になったことと思います。
 年長・ばら組の園児が協働で制作した四つの大型立体造形物です。
 二学期が始まるとすぐに27名のばら組の子どもたちは、6〜7名でひとつのグループを作り、作業を開始しました。
 どこのグループも完成までには、それぞれにドラマがあるのですが、ここでは、四つ葉のクローバーグループのA君の姿を記します。

 

 A君は、「虹」をつくりたいと思っていました。けれども、「四つ葉のクローバー」発案者であるB君のプレゼンテーションを聞いた女の子たちは、「(幸福のシンボル四つ葉のクローバー)幸せになれそう〜」とうっとり。女の子たちは、自分の案を捨て去り、B君の案に賛成の挙手。それで、四つ葉のクローバーに決まりました。この時、A君は号泣しました。A君のあまりの落胆ぶりにB君は、「虹でもいいよ」と言ってくれましたが、それでも、A君は泣いています。しばらくの問答の末、やはり、初めに立ち返り、多数決ということで、「四つ葉のクローバー」に決定しました。 その日の降園時、A君は迎えにいらしたお母さんの膝に顔をうずめて、涙と鼻水とよだれでぐちゃぐちゃになりながら、泣きました。それは、幼い子どもが壁にぶつかった時、お母さんのところに戻り、甘えることでやるせなさを解消し、壁を乗り越えていく子どもの姿そのものでした。
 でも、その後が5歳児らしい乗り越え方でした。数日後、入場門作りの合間、「つくるコーナー」にA君の姿がありました。「流しそうめん屋」を開店するところでした。私が通りかかると「流しそうめん、おいしいですよ、食べていかない?」と声をかけてくれました。トイレットペーパーの芯を縦に二つに切ったものをつなげてそうめんスライダーをつくっていました。そこに流れてくるそうめんは、なんと色とりどりの虹色。私が「冷や麦にピンクや緑の色付きがあるけど、全部が色付きのそうめんって初めてだわ」と言うと、近くでA君と私のやりとりを聞いていたばら組のC君が「僕のお父さんは子どもの頃、色付き冷や麦の取り合いで弟と何度もけんかしたらしいよ」と言いました。お客で、ひよこ組のDちゃんが、箸を上手く使えなくて、なかなかそうめんをつかめないでいたら、「継ぎ目のところは、そうめんがひっかかりやすいから、そこがチャンスだよ!」とA君がコツを教えてくれました。 (なるほど、そういえば9月1日の「納涼・流しそうめん祭り」の日も継ぎ目にひっかかったそうめんを狙っている人たちがいましたっけ。)

この時の「流しそうめん屋」のまわりは、穏やかで楽しい空気に包まれていました。
 A君は、そうめんをすする私に「入場門、7人のグループだから、虹がいいと思ったんだよね〜。虹をくぐって、入場するのっていいでしょ。それに、虹の下には、宝物が隠されているって知ってた?」と話してくれました。
 その顔は、号泣したあの時の顔とはすっかり違ってとても爽やかでした。紆余曲折の過程の中にこそ、子どもが育つ本当の学びがあることを教えてくれる顔でした。

〔 園長 木﨑 曜子 〕

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聖書のことば

わたしは植え、アポロは水を注いだ。

しかし、成長させてくださったのは神です。 」

                   〔 コリントの信徒への手紙Ⅰ 3章6節 〕

武蔵野相愛幼稚園

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