心のふるさと

 

 幼稚園創立80周年の記念に植樹したジューンベリーが6月を待たずして、5月の10日頃から赤い実をつけはじめました。その日以来、実の色をよく見て、赤を通り越し、赤黒くなるのを待って、子どもたちと摘んでは、ほんのりとした酸味と甘みが増した実を味わいました。
 フェンス際に植えてある木ですから、下校後、通りがかりの卒園生たちも道側から摘んで食べては、ちょっとおしゃべりをしてそれぞれ家へと帰っていきました。


 さて、6月に入り、新入の園児たちも幼稚園での生活に少しずつ慣れてきました。けれども、慣れのペースは、個人差がありますから、一人ひとりをよく見て、受けとめながら過ごしていきたいと思っています。


 卒園生たちの春もまた、さまざまでした。
 一年生になったAちゃんは、4月からほぼ毎日、学校帰りに幼稚園の前を通っては、フェンス越しに中を覗いたり、保育者とおしゃべりを交わしたり、ちょっとだけ園庭に入って、ちいさい人たちの遊びをながめたり…。通い慣れた幼稚園に立ち寄り、心にエネルギーを充電しながら、“小学校”という新しい環境に少しずつ馴染んでいくようでした。


 また、5月の半ば、夕暮れ時にフェンス際にたたずむ女子大学生が二人。
 こちらは、2006年3月に卒園したBちゃんとCちゃんでした。二人は、小学校、中学校、高校と別の学校に通っていましたが、この春進学した大学で、偶然にも再会したというのです。新入生を勧誘しているバドミントンサークルに試しで参加してみたら、見覚えのある顔が…。
 お互いに名乗り合い、「幼稚園は、どこ?」と確認し合うと、「相愛幼稚園!」。二人は、早速、「今度、ごはんを一緒に食べよう! それから、相愛幼稚園に行ってみよう!」と意気投合。
 それで、夕暮れ時、幼稚園のフェンス付近にたたずんでいたのでした。
 そして、十数年ぶりで幼稚園の中に入った時の最初の言葉は、「(幼稚園って)ちいさいね〜」でした。
 その言葉を聞いて、「幼稚園の建物は昔と変わっていないのよ。あなたたちが大きくなったからそう感じるのよ」と、私は微笑ましく思いました。
 幼稚園には、時々、このように懐かしく、嬉しい訪問者があります。


 “心のふるさと 我らが母校”とは、W大学の校歌の一節ですが、小学生のAちゃん、
大学生のBちゃん、Cちゃんにとって、相愛幼稚園が心のふるさとなのだろうと思い
ます。
 ふるさととは、折りにふれ、立ち返っては憩い、安らぎ、生きていく勇気を取り戻す場です。
 幼稚園卒業後、また、訪ねたくなるのは、うれしかったこと、楽しかったことと共にほろ苦い思い出もありながら、それらすべてを懐かしみ、心の深いところで、「幼い日、私はここで愛され、認められ、大切に思われる存在であった」と感じているからでしょう。


 幼児期の思い出は人の一生を支えるといわれます。
 今日も目の前の子どもたちと、この日、この時を丁寧に積み重ねていきたいと願い
ます。

〔 園長 木ア 曜子 〕  

 

 

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聖書のことば

 「空の鳥をよく見なさい。                 
       ・・・あなたがたは天の父は鳥を養ってくださる。」

                        〔マタイによる福音書6章26節〕