白木蓮の木の下で

 園庭の白木蓮のつぼみが膨らんできました。毎年そうであるように、きっと今年も卒園式の頃、白い卵の形をした花が満開になるでしょう。

 その白木蓮の木の下で、年長・ばら組の子どもたちが縄跳びに励んでいます。子どもたちは「もくひょうカード」を持っていて、そのカードには、「まえとび50かい」とか「うしろとび20かい」とか一人ひとりの目標が書いてあります。クリアするとそこに日付が記入され、また、新しい目標を立てて励みます。これは、他者との比較ではなく、自己の記録への挑戦です。

 目標を達成して、誇らし気に「もくひょうカード」を見せに来る子どもに対して、私たち保育者は、「頑張ったね」とその子の努力を褒めます。「○○回跳べてすごいね」という褒め方は、結果だけを大切にしていると子どもたちに感じさせてしまうからです。
 

 さて、2月は保育の勉強をしている大学一年生が実習にきていました。4月に入学して一年が終わろうとするこの時に、保育の現場で子どもを観察することが中心の実習でした。午後、子どもたちを帰し、掃除を終えると一日を振り返りながら実習日誌を書きます。そこには、保育者の子どもに対する言葉かけを記録している箇所がありますので、その箇所について私は尋ねます。「同じ場面であなたなら、どのように子どもたちに声をかけますか?」と。それから、「この場面で保育者はなぜこのように子どもに言葉をかけたのだと思いますか?」と。その問いに実習生が考えて返答する時、彼女たちはたいてい自身の子ども時代を思い起こして、その時の気持ちと照らし合わせています。そして、その作業を繰り返していくと、今度は、どのような価値観をもつ大人にどのような言葉をかけられて育つかということが、自己の形成に大きな役割を果たすのだと気づきます。

 一人の実習生が言いました。「ばら組の子どもたちはすごいなと思います。だって、上手く跳べない子どももみんなに混じって縄跳びをしています。いろいろなレベルの子どもが同じ場所で楽しそうに跳んでいるのです。私は子どもの頃、上手に跳べるようになるまでみんなの前では跳びませんでした。褒められて育った私は、跳べない私を誰も褒めてくれないと思っていたから…」と。それから、「私も結果でなく、プロセスを褒められていたら、失敗を恐れずに挑戦する人間になれたのに…。」と言葉を続け
ました。

 誰でも上手くやりたい、失敗したくないと思うのです。でも、人に失敗はつきものです。 東京大学・大学総合教育研究センターで「大人の学びを科学する」をテーマに研究している中原淳先生は、「よいチームとは、失敗しないチームではない。失敗したときに、責め合うことなく、失敗を受けとめ、リカバリーできるチームがよいチームである。」と教えます。「だから、失敗しないチームをつくるのではなく、失敗をリカバリーできるチームをつくるのだ。」と。


 私たち保育者集団は、よいチームでありたいと願います。チームの雰囲気は、そのまま幼稚園の雰囲気となり、子どもたちはその雰囲気を肌で感じながら育つからです。神と人とに愛されている相愛幼稚園の子どもたちには、失敗に臆することなく、しなやかな心で挑戦し続ける人に育ってほしいと願っています。

〔 園長 木﨑 曜子 〕

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聖書のことば

「主はわたしの光、わたしの救い 
わたしは誰を恐れよう。」

                  〔詩編27編1節〕

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