思いやり


  6月末から3週間、年中・すみれ組に短期入園者を迎えました。スウェーデンから一時帰国していたNちゃんです。
 在籍の最終日、Nちゃんのお母さんがお別れのご挨拶にいらっしゃいました。

 

 「6月はじめの帰国当時は、英語ばかり話していましたが、今では、寝言も日本語で言うようになりました。毎日、帰宅の道すがら、すみれ組のお友だちの話や先生方がどのようなお話しをしてくださったか、『つくる部屋』がどんなに楽しいか、相愛フェスタの準備がどのくらい進んでいるか、興奮気味に話してくれました。その様子からNがどれだけ日本のお友だちや先生方、そして、相愛幼稚園を好きになったか、すぐにわかりました。
 また、偶然にも相愛幼稚園80周年の節目に入園させていただいたことで、“相愛フェスタ”や“記念講演会”を経験させていただく幸運にも恵まれました。それから、7月生まれのNも他のお友だちと一緒に誕生会でお祝いしていただくなど、嬉しく、有り難かったことは限りなくありますが、日本人の私の目から見て、この3週間を通して、Nが“思いやり”というコンセプトを体験し、『すみれ組のお友だちはみんな思いやりがあるんだよ』と話してくれたことが一番嬉しかったです。Nの話から推察すると、すみれ組のお友だちが毎日、Nが楽しく過ごしているかどうか、気にかけてくれたようで、それが“思いやり”であること、そして、それは本当に素敵なことなんだと感じ、『私も思いやりを大切にしたい』と思ったようでした。親として、娘のこのような姿を見るほどうれしいことはありません。」とおっしゃいました。

 私はNちゃんのお母さんの言葉を伺い、こちらの方が嬉しい気持ちになりました。
 これは、まさに“相愛の精神”だからです。

 

 人が初めて見知らぬ人々の集団に入るとき、新しい環境や新しい出会いに期待と不安の入り交じった感情を味わいます。これには個人差がありますが、中には、幼稚園に入園した時に感じる不安や緊張がとても大きな子どもがいます。そのようなとき、家庭から離れて過ごす不安や淋しさを受け止め、緩和してくれるのが、優しそうな保育者の存在です。子どもは、保育者の表情や仕草、話し方、服装などから優しそうと感じ、親しみや信頼、憧れを抱きます。そして、このとき、寄り添い、自分の気持ちに共感してくれた保育者の対応が、思いやりを発揮する際のモデルとして子どもの心に取り込まれるのです。
 

 Nちゃんに思いやりを発揮した子どもたちは、今まで心に取り込んできた保育者の姿をモデルにして、今度はNちゃんに対して、自分もそうしてあげようという気持ちが起きたのでしょう。
 

 一人ひとりの子どもへの保育者の対応は、相対する子どもへの対応にとどまらず、周りの子どもたちへの働きかけともなっているのです。このことを心に留めて、子どもたちとの生活を丁寧に重ねていきたいと願う二学期の始まりです。

〔 園長 木﨑 曜子 〕

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             〔詩編37編37節〕

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