Let It Be(なすがままに)
『Let It Be』という曲があります。ビートルズフアンであってもなくても皆よく知っている有名な曲だと思います。
実はこの曲にはマリアが出てきます。前から気になっていたので少し調べてみました。すると、この曲を作ったポール=マッカートニーという人のお母さんの名前が、「MARY」なんですね。
更に調べてみると、ビートルズを解散するかどうかで悩んでいたP=マッカートニーが夢で死んだ母親の「MARY」さんと出会った。その時にお母さんが「LET IT BE」、「なすがままになさい」と言ってくれた。それで、とても楽な気分になって勇気が出てきた。あの歌詞は、そういう意味だったのです。
これはわたしにとっても驚きの発見だったので、友人の牧師たちにその話をしたところ、ある牧師が「あれは確かにポールのお母さんのことだけども、ちゃんと聖書にも根拠がある」と教えてくれました。
「お言葉どおり、この身に成りますように」。
つまり、神の言葉のなすがままに任せる。「LET IT BE」ですね。P=マッカートニーは、夢で見たMARYお母さんの言葉と、聖書のこの言葉をひっかけてあの歌を作ったと思う、とその牧師は言っていました。
病気や事故、災害や犯罪のせいで、ある日突然人生を大きく変えられてしまったという人が大勢います。その結果、全てに失望して生きていても意味がないと思ったり、実際に自殺してしまう人もいます。けれども「踏み外した所にも、新しい道がある」ということを発見して、挫折を乗り越えて立ち直る人たちも大勢います。立ち直るとは、必ずしも元通りになり問題が解決するわけではありません。「なるようになる」ことを希望にして進む生き方です。私たちも「こんなはずじゃなかった」と落ち込む時に、「お言葉どおり(神さまがなすがままに)、この身に成りますように」と人生を受け入れたマリアを思い出しましょう。
野尻千穂子さんは十二歳の時に下半身麻痺になりました。絶望のあまり病院の屋上から飛び降り自殺を考えた母親に対して彼女は、「これが私に与えられた人生なら、私は死なない」と告げたそうです。
そんな千穂子さんが長じて一人の青年とめぐり合い、結婚を決意します。その青年も脳性麻痺で足が不自由でした。破局を恐れた両親はその結婚に猛反対しますが、二人は教会で結ばれます。
それからまもなく彼女は妊娠します。そこでまた大きな決断を迫られることになりました。「障害児が生まれるかもしれない」と医師が告げ、友人たちまでも彼女の命の危険を思って出産に大反対したのです。
その時、千穂子さんは言いました。
「たとえ自分は死んでもいい。一つの新しい命を生み出すことができれば。」
夫もこう言いました。
「万一障害児が生まれても、仲間が一人増えたと思えばいい。」
素晴らしい言葉だと思いませんか。毎年クリスマスを迎える度に、このご夫妻を思い浮かべます。そして間違いなく、千穂子さんもマリアのように不安の中で天使のお告げを聞きました。だから「お言葉どおり、この身に成りますように(LET IT BE)」と言えたのでしょう。
〔 牧師 真壁 巌 〕
聖書のことば
「いと高き ところには 栄光、 神にあれ、
地には 平和、御心に 適う人に あれ 。
〔ルカによる福音書 2章 14節〕