新しい春へ向かうとき
2月は二回、週末に雪が降り、二度目の雪の日に砂場の藤棚が折れて、今は植木屋さんが三本の丸太を渡して
応急処置をしてくださり、急場を凌いでいます。また、
クリスマスの頃から早々に蕾を膨らませていた園庭の
白木蓮は、この雪と寒さに開花の時期を見計らっているようです。
さて、寒い外とは対照的に温かい部屋の中ではお正月明けから機織りの手仕事に勤しむ
年長・ばら組の子どもたちの姿が見られ、小さな手指を動かしながら、楽しい会話やおしゃべりがはずんでいます。
「わたし、相愛幼稚園でよかった〜!
友だちがたくさん出来て、楽しいこともいっぱいあったし…!」とAちゃん。
別の場所で、
「わたしのパパとママは素敵な出会いがあって結婚したんだって!」とBちゃんが言えば、
「へぇー、うちのパパとママは最初は知らない人同士だったんだって!」とCちゃん。
Aちゃんの言葉からは卒園を前にして、園生活への喜びと感謝が感じられ、Bちゃんと
Cちゃんの会話を耳にした私は「幼稚園の友だちもそのほとんどが知らない者同士からの出発だったのよ」と心の中で思いながら、私自身がここに集う一人ひとりの子どもの大切な一年を
共に生きることを許された幸いを感謝していました。
また、年中・すみれ組のDくんのお母様は、
「息子が『今の僕だったら、Jくんと仲良く遊べると思う』って言うのです。」
と教えてくださいました。
Jくんは昨年度、年少の一年間を相愛幼稚園で過ごして、他園へ転出していったDくんの
クラスメイトです。年少の一年間はお互いに気になる存在でありながらも衝突することが多く、上手く気持ちを通わせて遊ぶことの出来ない二人でした。けれども、Dくんは年中のこの一年、毎日の小さな出来事を通して自信をつけ、年度末を迎えた今、“今の僕だったら…”とJくんとの関係を想像してお母さんにそう告げたのでしょう。
私たちは「しっかりと自分を表現し、衝突を繰り返しながらも葛藤を乗り越えて許し合い、
認め合い、助け合える子どもになってほしい」と願いながらこの年度も保育をして参りました。
どの子もただ単に楽しいだけの園での生活ではなく、さまざまな試練に出会いながら、それを乗り越え、鍛えられてここまでやってきたのです。
子どもも大人も神さまと人とに愛され、ゆるされて過ごせたこの一年を感謝します。
3月になりました。新しい春を前に、希望をもって歩みをすすめて参りましょう。
卒園式まであと18日。
最近、私が読んだ保育誌に掲載されていた小学一年生の歌を紹介します。
「ようちえん、
にゅうえんしきで ぼくがなき
そつえんしきで ママがなく」
〔1996年「朝日小学生新聞」より〕
〔 園長 佐川 曜子 〕